目陰

「イタチノマカゲ」という言葉をご存じでしょうか。

辞書を引くと「鼬の目陰」とは、

《イタチが人を見るときに前足を目の上にかざすという俗信から》疑わしげに人を見るようすと書かれています。

人もまぶしい物を見るときや、遠くを見渡すときに手を額にかざします。

実際にイタチが前足を目の上にかざすか否かは、定かではありませんが、

周囲の状況を確認するために、時々後ろ足で立ち上がる行動をとります。

「敵はいないか?」「食べられるものはないか?」

「おや?土手の上に人影が・・・」「何だかこっちをみているな」

「まさか、撃たれやしないよな?」といぶかしがるようすが、そんな俗信を生んだのでしょう。

イタチは疑り深い反面、好奇心が強い動物です。

冬の夕暮れ、渡良瀬湧水地の土手でみかけたイタチも、

何度も何度もこちらを窺いながら徐々に遠ざかって行きました。

イタチの目陰

両生類・爬虫類、哺乳類担当 釣谷洋輔

技術交流会で発表しました

植物調査・環境教育担当の中村です。

12月4日、「NPO法人野生生物調査協会」のシンポジウムがありました。このNPOは、当社をはじめとする複数の生物調査会社が運営しており、年に1回、技術交流会としてシンポジウムを行っています。今回、話題提供者のひとりとして発表させていただきました。

発表の様子。トップバッターで緊張しました。

発表の様子。トップバッターで緊張しました!

発表内容は、「市民参加調査を通じた普及啓発」について。私は、調査が主な業務であるこの業界にあっては「異端児」で、一般の方を対象とした観察会や講習会などの環境教育を主な仕事としてきました。

発表後、参加者と話をする中で、まだまだ普及啓発の仕事はあまり多くないけれど、業界として重要な分野だと改めて感じました。

普及啓発を行ううえで大切なのは、新しい「視点」を与えることです。

わたしたちは、ある意味、ふつうの人とは違った視点で、世界を見ています。普通に歩いていても、ふと生きものに目が行きます。その場所は、「生きものにとってどんな環境なのだろうか?」と、つい考えてしまいます。生きもの調査のプロとは、そうした「視点」を持って、調査を行い、わかったことを報告書に表現していくのです。

そんな「生きものを見る視点」を持っているわたしたちが発信できることは、星の数ほどあるはずです。わかりやすく、面白く伝えるには、工夫や技術が必要ですが、ネタがたくさんあるということは、本当に面白いことだと思っています。

(中村麻祐子)

 

明治神宮で蛾の調査を再開

「鎮座百年記念第二次明治神宮境内総合調査」は、2013年秋の報告書の出版と日本学術会議シンポジウムの開催でいったん終了しましたが、調査を担当した当事者たちの情熱はそう簡単に冷めるものではありません。私の専門性からいえば、昆虫類に調査不足の負い目があって、たびたび比較される皇居の水準に追いつきたい、できれば追い越したいという思いが強く残りました。

とくに蛾の仲間の確認種数が150種と少なく、この数字は皇居の記録630種の1/4にも及びません。皇居の調査は5年以上を要しているので、明治神宮の僅か1年の調査と比較すること自体に無理があるのですが、そうはいっても記録は記録。明治神宮の蛾は皇居の半分しか知られていないという事実に変わりはありません。

そこで特別に許可をもらい、この蛾の仲間について2014年秋から調査を再開しています。この調査には、日本蛾類学会会長の岸田泰則さん、それから日本有数のヤガ類の研究者である枝惠太郎さんが参加されています。言いだしっぺの責任として、私もほぼ毎月のように同行しています。

灯火採集は闇夜に近い暗い夜ほど成績が良いのですが、不夜城の都会の夜空は思いのほか明るく、灯火採集の白幕に飛来する蛾の数は多くありません。そうした苦戦を強いられながらも、調査回ごとに少しずつ記録が更新されていくのは、私たちの励みと楽しみでもあります。

(新里達也)

参道脇にいたオオミズアオ

参道脇にいたオオミズアオ

灯火採集の風景

灯火採集の風景

秋探し

秋の深まりを感じるには、人それぞれの感受性がある。景色であったり、食べものであったり、香りや肌で感じるものもある。

今秋、仕事の一環で、都内の多摩川水系秋川の上流に行ったときのこと。渓谷の近くを散策しながら、動物のフィールドサインや生息環境を確認していると、ふと葛の枯葉の中に気配を感じた。

まるまった布団のような枯葉をそっと広げると、小さな毛むくじゃらのコウモリの姿があった。コテングコウモリである。晩秋になり植物の葉が枯れてくると、昼間のねぐらとして潜り込むのだ。

これまでの調査経験から、東北地方や中部地方、北関東の山間部では確認したことがあったが、都内では初めて目にした。

こんな発見で秋の深まりを感じるようになって、どれくらい時間が経つのだろう。苦笑いしながら、コウモリを起こさないように静かにシャッターを切った。

(両生類・爬虫類、哺乳類担当 釣谷洋輔)

コテングコウモリ

コテングコウモリ

フォトエッセイ「杜のいのち」

明治神宮では、行事と境内の案内を兼ねた、月刊リーフレット「まごころ」を配布しています。境内随所に置いてあるので、参拝者の目に留まる機会も多いかと思います。そのわずか8面の質素な構成のなかに、「杜のいのち」という連載フォトエッセイがあります。

テーマは明治神宮に見られる生きものたち。写真は佐藤岳彦さん、文章は私が書いています。2014年5月から1年は昆虫を扱い、2年目の今年は両生類・爬虫類、来年は鳥の予定です。1年の12回を区切りに、一つの生物グループを紹介する企画です。

はじめは簡単な仕事だと引き受けたのですが、写真1点と原稿用紙1枚に、季節感をもたせ、明治神宮らしさを織り込むとなるとけっこう苦労します。1年目の虫は季節を追って現れるものが違うのでよかったのですが、ヘビ・カエルの類はそうはいきません。一部を除けば季節と関係が低いうえ、寒くなると休眠してしまうので、彼らの出番を作りにくいのです。

そんなわけで、今月あたりからだいぶ怪しい筋書で話を作っています。ヒバカリ(ヘビの仲間・11月号掲載)は、もう野外では姿を見ることはできないので、適当なヨタ話でお茶を濁しました。12月はスッポンの予定ですが、季語は何かと突っ込まれたら、「丸鍋」と開き直るつもりでいます。

(新里達也)

月刊リーフレット「まごころ」

月刊リーフレット「まごころ」

都市河川に浸り続けて

魚類担当の川口です。本日、会社のホームページをリニューアルしました。本ブログでは、弊社スタッフのこぼれ話等々、不定期ながら更新していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、私の所属する東京支社は、都心に事務所を構えていることもあって、都会の中で調査をする機会が多々あります。先日は、都内下町を流れる小河川で魚類 調査を実施しましたが、たかだか2時間ほどの調査で、アユ(写真)をはじめ20種を超える多くの魚類を確認することが出来ました。かれこれ20年ほど東京 の河川と付き合ってきた私としては、近年の河川環境の改善に伴う魚類の増加は、なんとも感慨深いものがあります。
一方で、外来種も増えているという問題もあります。金魚やいろんな色のメダカが採れるぶんにはまだかわいいほうかもしれません。先日実施した都内3河川ほどの調査では、恐ろしいことに、日本に定着している特定外来生物の5魚種をコンプリートしてしまうという偉業(悪行?)を成し遂げてしまいました。
とにもかくにも人の暮らしに翻弄され続ける都市河川。今後も長く浸り続けていきたいと思います。

画像_アユ