タンスイベニマダラを育ててみる

【2016年1月上旬】都内の河川でタンスイベニマダラを採取。観察用に持ち帰ってみる。

タンスイベニマダラ採取時

採取時(赤い部分がタンスイベニマダラ)

 

【2016年2月上旬】持ち帰ったタンスイベニマダラを社内の雑魚水槽に入れてみて1ヶ月が経過。調子は良いようだ。赤い色がなんとも美しい。

タンスイベニマダラ1ヶ月経過

1ヶ月経過

 

【2016年4月上旬】水槽に入れて3ヶ月が経過。ちょっと輝きがなくなったような気がするが、ひとまず元気そう。表面にいろんな藻類(以後“雑藻(ざっそう)”と呼ぶことにした)が生えてきているのがちょっと気になる。

タンスイベニマダラ3ヶ月経過

3ヶ月経過

 

【2017年2月上旬】しばらく忘れていたのだが、気がつけば1年あまりが経過。とりあえず死んではなさそうだが、表面の雑藻がだいぶ増えている。大丈夫だろうか。

タンスイベニマダラ1年1ヶ月経過

1年1ヶ月経過

 

【2017年2月中旬】なんとなく気になって顕微鏡で見てみる。大丈夫。ちゃんとタンスイベニマダラのかたちをしている。

タンスイベニマダラ顕微鏡写真

顕微鏡写真

 

【2017年2月下旬】なんと、水槽掃除の時にガラス面にたくさんくっついているのを発見。雑藻にも負けず、水槽内の環境に適応して確実に増えているようだ。

タンスイベニマダラ ガラス面で増殖中

ガラス面で増殖中

 

【2017年3月現在】観察継続中。

 

タンスイベニマダラ・・・紅藻綱ベニマダラ目ベニマダラ科に属する淡水性の紅藻類。湧水や水質の清涼な河川・水路でみられ、流水中の岩盤や小石にへばりつくように生育する。環境省のレッドリストにより準絶滅危惧に指定されている。

(東京支社・マイナー生物班)

 

「チバ」でも「トウキョウ」・・・

2017年の2月は降水量が少なかった印象の関東地方。寒気も何回か入って気温も低い日が続きました。春の足音ももうそこまで・・・からが長く感じます。

以前に「ナガレタゴガエル」を紹介しましたが、続いて紹介する旬な両生類というと「止水性サンショウウオ」です。止水性(しすいせい)というのは水の流れが止まってたまっている、あるいは緩やかになりほとんど止まっている場所のことで、そのような水辺に生息するサンショウウオ、即ち「ナガレナイサンショウウオ」ということになります(そんな種類はいませんが)。

千葉県では例年ならば、2月中に止水性サンショウウオの繁殖期が始まるのですが、前述のとおり今年はなにやら不穏な気候。じっくり機会をうかがって3月4日に探索に出かけました。千葉県では丘陵地が浸食されてできた谷戸環境のことを「谷津」といいます。水はけの良い谷状の地形を利用した水田などの農業とそれに付随する里山の生態系全体を意味することもあります。今回の舞台はそんな千葉県のとある「谷津」になります。

早春の水田ではすでに「田おこし」がはじまっていました。丘陵地の斜面から染み出る水や湧き水は、水路に集められ水田へと導かれます。流れてきた水は水田に入る前に、水温を高めるため「ぬるめ」というたまりにいったん貯められます。「ぬるめ」は流れがほとんどなく、水がプールされています。そんな止水が狙い目です。足音を立てないようにそっと近づくと、お目当ての「トウキョウサンショウウオ」が水中に沈む枝先や植物の茎に乗っています。この行動はオスがメスを誘引するもので、ときどき揺さぶるように身体を動かします。

トウキョウサンショウウオ_オス

トウキョウサンショウウオ_オス

カメラ機種 : SONY ILCE-6000

レンズ:E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS

露出制御モード : マニュアル設定

レンズの焦点距離 : 50.00(mm)

シャッター速度 : 1/100秒

レンズF値 : F8.0

露光補正量 : EV0.0

フラッシュ : 強制発光・リターン不検出

ISO感度 : 800

トリミング:あり

しかし、オスの周辺をさがしても肝心のメスや卵は見つかりません。そこで少し離れた水路の落ち葉をどけてみると、卵でお腹がポッテリ膨らんだメスをみつけました。これで答え合わせができました。どうやら今年は2~3週間遅れで繁殖期が始まったばかりのようです。

それにしても、千葉でも「トウキョウ」って・・・。「ネズミ」がモチーフの某有名テーマパークみたいです。

トウキョウサンショウウオ_メス

トウキョウサンショウウオ_メス

カメラ機種 : SONY ILCE-6000

レンズ:E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS

露出制御モード : マニュアル設定

レンズの焦点距離 : 46.00(mm)

シャッター速度 : 1/100秒

レンズF値 : F10.0

露光補正量 : EV0.0

フラッシュ : 強制発光・リターン不検出

ISO感度 : 125

トリミング:なし

両生類・爬虫類、哺乳類担当 釣谷洋輔

サンプリングハイ

「真冬に川とか入って寒くないのー?」ってよく聞かれますが、実は全然寒くありません。どんなに気温が低くても、水が冷たくても、そして大雪の中でも、ついつい魚捕りや水生昆虫採集に熱中してしまうため身体はポカポカ、むしろ暑いくらいになってしまいます。某先生曰く、これは“サンプリングハイ”と呼ばれる症状とのことです。この症状のおかげで、今シーズンの冬の調査も、風邪などひくこともなく元気に乗り切ることができました。

でもまだまだこの時期、朝は布団から出るのが非常につらいです。サンプリングハイが発症するのは、やはりサンプリング時のみに限られるようです。

水生生物担当:川口

雪の中での調査風景

気になるあいつ

週末、生きもの観察をしに武蔵野の山へ出掛けてきました。足元には霜柱、木々の芽もまだ硬く、立春は過ぎましたがまだ冬の気配が漂っていました。この辺りの時期、植物はまだあまり見るものはありませんが、コケや地衣類など、冬でも枯れない小さな生きものの観察にはぴったりなのです。
とはいえ今の時期、外に出るのに心配事がある方も多いはず。気になるあいつ、スギ花粉が漂っているかどうかです。私は花粉症の気があるので少し心配していたのですが、道沿いで見つけたスギをおそるおそる見てみると、花穂はまだ硬く閉じていました。それを見てほっと一安心、この日は山歩きを楽しむことができました。今日の暖かさでこの週末には漂いはじめてしまうのかもしれませんが・・。

写真は閉じていたスギの花穂と、花穂から取り出した花粉を生物顕微鏡で見たところです。花粉の大きさは30μm(0.03mm)ほどで、小さなツノがあってミカンのような形をしています。こうして見るとかわいらしくもあるように思います。みなさんはどう思われますか?

スギの花穂

スギの花穂

 

スギ花粉 顕微鏡 対物20倍

スギ花粉 顕微鏡 対物20倍

植物・キノコ担当 池田

 

 

そうだ「カエル」を見に行こう!

連日、大雪のニュースが続いています。

東京都心では雪こそ積もりませんが、寒い日が続きます。

この時期になると数年おきに、カエル観察に行く場所があります。

都心からみると、奥多摩まで行かない手前なので「てま多摩」とでも言いましょうか。

今回の舞台はそんな多摩川水系のとある支流になります。

谷の中の気温は昼を回っても5℃前後、天気は良いのですがこの時期の低い太陽光はほとんど注ぎません。

別会社の知人と、沢筋に足を進める休日の午後です。

目的地は流れの合流部付近にある、いわゆる「たまり」。

その場所は以前と大きく変わらずありました。

長さ5m幅3mくらいのプールで、水深は約40cm、水の流れが緩やかになり、大きめの岩がいくつか沈んでいます。

そのような環境は渓流内にたくさんあるので、おそらく他の場所でもよいのでしょうけれど、なにぶんアクセスがよいので、ついつい楽をしてしまいます。

到着するとすぐに川底に沈む「お宝」を発見しました。

数匹の「ナガレタゴガエル」が我々の気配に気づいて、岩陰や落ち葉の中へモゴモゴと隠れていきます。

このカエルは渓流に生息し、2~4月に産卵する種で、生きものとしては比較的最近になってから、名前がつけられたカエルです。

この渓流でも、どうやら今年も無事に繁殖期が始まったようです。

卵でお腹がパンパンに膨らんだメスに、ぶよぶよのオスが必死でしがみついています。

そのたまりでは、産み出された卵はまだ確認できなかったので、少しだけ時期が早かったかもしれません(2月11日)。

昨秋、個人の趣味で購入した一眼用のハウジングにて、冷水に手を突っ込んで水中撮影を試みました。

かじかんで思うように動かない指先に季節を感じました。

ナガレタゴガエルのペア

ナガレタゴガエルのペア

カメラ機種 : SONY ILCE-6000

レンズ:E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS

露出制御モード : プログラムAE

レンズの焦点距離 : 30.00(mm)

シャッター速度 : 1/60秒

レンズF値 : F5.0

露光補正量 : EV0.0

フラッシュ : 強制発光・リターン不検出

ISO感度 : 2500

トリミング:あり

両生類・爬虫類、哺乳類担当 釣谷洋輔

潜水調査

魚類担当の川口です。

先日(といっても昨年の話ですが)、やや久しぶりに潜水調査を行いました。

晩秋の東北は当然のように寒くて水も冷たく、涙目でドライスーツに袖をとおし川に入りました。しかし、ひとたび水の中に入ると無数の魚たちが出迎えてくれ、寒いのも忘れて夢中になって潜り続けてしまいました。東北の田舎のほうの河川は外来種も少なく、まだまだ生きもののざわめきが感じられます。おかげで身体はすっかり冷え切ってしまいましたが、なんとも言えない充実感とともに帰路につきました。

あまり写真を撮る時間はありませんでしたが、川底でボケッとしていたヤマメだけパチリしました(下の写真)。

それにしても、今より5キロやせてた時代に作ったドライスーツがきつくてしんどくなってきました。意を決して新しいドライスーツを新調するか、あるいは5キロ減量するか、悩ましいところです。

ヤマメ

 

 

「大寒」波到来~二十四節気編vol.24~

1月20日からは「大寒(だいかん)」という節気に入ります。

暦の上でも一年のうちで寒さの最も厳しい時期とされますが、文字通り先週末にはこの冬最大の寒波が到来し、日本海側や西日本、北日本で大雪に見舞われました。

中部地方でも朝の気温が-6℃という厳寒での調査でした。

こんな寒い中、生きものなんているの?活動しているの?

前回のブログで書いたように、鳥類は元気に活動しています。

哺乳類は冬には「冬眠」するイメージがあるかと思いますが、実は、日本に生息する哺乳類で「冬眠」をするのはクマやヤマネ、コウモリ類など限られた種類のみです。その他のリスやタヌキ、ノウサギなどは真冬でも活動しています。

調査地でも何種類かの哺乳類が雪の上に足跡を残したり、落とし物(糞)をしたりとたくましく生き抜いている痕跡を残していました。

フットプリント

 

カメラ機種 : NIKON D600

レンズ:AI AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED

露出制御モード : マニュアル設定

レンズの焦点距離 : 300.00(mm)

シャッター速度 : 1/400秒

レンズF値 : F8.0

露光補正量 : EV0.0

光源:白熱電球

フラッシュ : 発光禁止

ISO感度 : 400

 

「大寒」を迎え、一年間続けてきた二十四節気編もこれで最後の投稿になります。

生きものに関する節気折々の話題を書き綴っているうちに、私自身も新たな発見や知識、調査中の視点が増えたような気がしています。

何より、日本には春夏秋冬以上の季節の移り変わりがあって、ひとつひとつに美しい名前がついており、それを感じ取り、楽しむことで、豊かな風土を育んでいるのだなと強く感じる一年となりました。

つたない文章ではありましたが、これまで読んで下さった皆さまにも深く感謝申し上げます。

これからは不定期になりますが、時事折々の記事を書いていこうと思います。

ありがとうございました。

「凍てつく壁」(砂防ダムの擁壁)

 

カメラ機種 : SONY ILCE-6000

レンズ:E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS

露出制御モード : マニュアル設定

レンズの焦点距離 : 29.00(mm)

シャッター速度 : 1/100秒

レンズF値 : F6.3

露光補正量 : EV0.0

光源 : 白熱電球

フラッシュ : 発光禁止

ISO感度 : 500

両生類・爬虫類、哺乳類担当 釣谷洋輔

 

「ワンダーネット」~二十四節気編vol.23~

明けましておめでとうございます。

今年も皆さまにとって実りある一年になることをお祈り致します。

いよいよ2017年になり、1月5日からは「小寒(しょうかん)」という節気に入りました。

寒さが本格的に増してくることから「寒の入り」などとも呼ばれます。

昼間はぽかぽかしていても、夕方からグッと冷え込みが厳しくなります。

ましてや日が昇る直前の明け方は一番の寒さ。日本の冬、結構寒いですよね。

今年は酉年ということで、そんな早朝から元気な鳥のお話を少々。

そもそもなんで鳥は寒くないの?凍えないの?

外気温が何℃でも、鳥の体温は常に40℃前後に保たれています。

その秘密は高性能のダウンジャケットにあります。

人間が着ていても温かいダウンジャケットですが、大きな水鳥になると体に約10万枚もの羽毛を持っています。

どんなに寒くても、羽根に含んだ空気の層が体温の放出を防いでくれます。

でも、足はむきだしじゃなかったっけ?

人間も羽毛布団にくるまって寝ていても足だけ出ていたら、寒くて目が覚めてしまいますね。

そこで登場「ワンダーネット」。

日本語では「奇網」あるいは「奇驚網」と呼ばれる毛細血管の網状の構造を足の付け根あたりにもっています。

冷たい足の先の方からもどってきた冷えた血液は、足へ向かう動脈の温かい血液によってあたためられてから体内にもどり、一方、足へ向かう温かかった動脈血は、熱を奪われて冷たい血液となって足の方に運ばれていくので、足だけ冷たい血液を流すことができる。因みに水鳥の足の温度は5℃前後だそうです。

足と体の温度を分けることで、体温を一定に保っていたのですね。

残念ながら、人間にはその機構はないので、足下も暖かくしてお出かけ下さい。

写真は正月に実家に帰省した際に近所の公園で撮影したジョウビタキ(オス)です。

紋付きで謹賀新年ご挨拶

カメラ機種 : NIKON D600

レンズ:AI AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED

露出制御モード : マニュアル設定

レンズの焦点距離 : 300.00(mm)

シャッター速度 : 1/1000秒

レンズF値 : F10.0

露光補正量 : EV0.0

フラッシュ : 発光禁止

ISO感度 : 400

トリミング:あり

両生類・爬虫類、哺乳類担当 釣谷洋輔

謹賀新年

新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

年頭にふさわしいに気の利いた話が思い浮かびませんので、最近リニューアルした会社パンフレットの話をさせてもらいます。

暮れも押し迫った12月26日に、半年がかりで制作に取り組んでいた会社のパンフレットが納品されました。わずか半年前のことなのに記憶が曖昧なのはたぶん老齢のせいですが、たしか昨年の梅雨前に着手したように覚えています。旧版のパンフレットの制作を委託した自然デザイン研究所の高畠雅晴さんにお声掛けをして、制作の打ち合わせが始まりました。当初は完成を10月初めに設定していたのですが、新パンフレットのコンセプトがなかなか定まらず、まったく想定外の時間を要してしまいました。

恥ずかしい話になりますが、これまで使っていたパンフレットは、もう20年以上前に作った旧版にマイナーチェンジを加えてきたもので、デザインは別にして、そこに書いてある内容は時代遅れもよいところでした。それもあって、積極的にお客さんにお渡しすることもなく、当社には紙媒体のパンフレットは存在しないという暗黙の了解が社内の申し合わせでもありました。いまはホームページがあるので、紙媒体のパンフレットが活躍する時代でないことは確かにあるかもしれません。それでもときどき、たいがいは新規のお客さんを前にしたときに、何もお渡しするものがないというのは、間の持ちようがないこともあります。いつかやらねばという思いは、ここ数年続いていました。

完成した新パンフレットとはどれほどのものかというと、A3判見開きの、ページ数にして4ページという実に簡素なデザインであります。表紙・裏表紙2ページは旧版のリメイクで、ちょっと見た目にはどこが違うかわかりません。それだけでやる気のなさが感じられますが、実は旧版のこのデザインがとても気に入っていて、これだけは残したいという強い思いがありました。たくさん配置されている生き物の絵は、松本剛さんの手によるものです。その表紙を開くと、原色の里山の風景がA3判の大きさでバーンと展開します。もうただそれだけです。この風景画は、増田庄一郎さんに何回も描き直しをお願いして、仕上げてもらいました。

パンフレットのデザインイは残暑の頃にはほぼ固まっていました。デザイナー(高畠さん)と上記のお二人の画家と4人での打ち合わせになってから、ビジュアル先行で話がまとまり、私にも完成形がおぼろげながら見えてきました。ところで、コンセプトが決まらなかったと冒頭で書きましたが、実はこの時点でもかなり怪しげな状態でした。しかしそれも、打ち合わせ中に私が口にした「自然には価値がある」という台詞に、高畠さんがこだわりをもたれ、私になにかキャッチコピーを書いてくれと言われてから、急速に進展することになりました。

新パンフレットの主テーマは「自然には価値がある」ということになります。4つのキャッチコピーは「人は自然そのものだ」「コンクリートの築城」「生命は世代をつなぐ」「自然の恵みとは何か」です。あまり難しい言葉は使いたくないし、むしろ平凡すぎるくらいにしようと心がけました。コピーの作文は書いては消しの繰り返しで、1週間くらい暖めていました。このような一種キワモノのパンフレットを作ってはたして良かったのか、あとは皆様方にご判断を仰ぐしかありません。

新パンフレットです!

「一陽来復」~二十四節気編vol.22~

今年の「冬至(とうじ)」は12月21日。2016年最後の節気に入りました。

「冬至」も有名な節気なので、みなさんご存じと思いますが、「一年で最も昼の時間が短い日」とされます。

その事実を別の角度からみると、「冬至」を過ぎれば昼の時間が長くなっていきます。

衰えていた太陽の力が再び勢いを増してくるということから、「冬至」のことを「一陽来復(いちようらいふく)」ともいい、悪いことが続いた後に幸運に向かうという意味も込められているのです。

同じ現象でも、とらえ方によって前向きに変わるものです。

更に「冬至」の次候、12月26日頃は「麋角解(きわしかのつのおつ)」とされます。

意味としては勇姿を誇る雄鹿の、枝ぶり豊かな大角が抜け落ち、生え替わりの時期を向かえる頃とされています。

大きくなり過ぎた力を削ぎ落とし、新たな気持ちを胸に一歩を踏み出す。

つまり、「初心に還る」という意味をもっています。

実際にニホンジカの角が抜け落ちるのは、もう少し先の早春です。

4月には再び角袋が生え始め、夏の間にみるみる伸びていき、繁殖期を迎える10月頃には立派な角が完成し、雄同士の角突きが行われます。

あの大きな角が毎年毎年生え替わるという事実が、「生きる」エネルギーを感じさせてくれます。

しかし、そんなニホンジカも別の角度から眺めてみるとここ数十年の間に人間や生態系に大きな影響を与えている側面があります。

野生動物の保護管理(ワイルドライフ・マネジメント)の最前線では、日本各地の山林や耕作地で、増えすぎたニホンジカの食害による深刻な森林被害や農業被害が報告され、実態の把握、防除技術の研究・開発、有害鳥獣駆除などが急がれています。

こういった問題は、動物愛護の観点と経済的な観点の対立や狩猟・害獣駆除人材(技術者)あるいは予算の不足により、一筋縄では解決に至らず、対策が難航しているのが現状です。

「生きものを守る」仕事に携わる者として、ひとつの物事を別の角度から見つめ直すことの重要さを調査中に拾いためた角や頭骨を眺めながら考える年末です。

シカコレクション

カメラ機種 : SONY ILCE-6000

レンズ:E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS

露出制御モード : プログラムAE

レンズの焦点距離 : 36.00(mm)

シャッター速度 : 1/20秒

レンズF値 : F5.6

露光補正量 : EV0.0

フラッシュ : 発光禁止

ISO感度 : 3200

トリミング:あり

両生類・爬虫類、哺乳類担当 釣谷洋輔