仕事納め

クリスマスも終わり、平成29年も残すところあとわずかとなりました。弊社は本日が仕事納めです。(まだ仕事が終わらない人、現場に出ている人もいますが。。。)

今年も忙しい1年となりましたが、大きな事故も無く、おかげさまで無事に年を越すことができそうです。年末年始、くれぐれも飲み過ぎないようにし、リフレッシュして新たな年を迎えたいと思います。

納会

というわけで、納会が始まりました。虫の話をはじめ、相変わらずマニアックな話題で盛り上がっています。

最後に本年も大変お世話になりました。新年も何卒宜しくお願いいたします。

環境指標生物HP係

スジボソギンヤンマを採集!

ギンヤンマとクロスジギンヤンマの雑種、通称『スジボソギンヤンマ』を採集しました。

採集日は2017年9月10日、採集地は宮城県岩沼市の海岸にある池沼で、岸辺の路上を飛翔しているところをネットインしました。

一見クロスジギンヤンマに似ていますが、翅胸側面の黒色条(クロスジの形質)が細い点、頭部の額にみる黒色と青色の平行に走る斑紋(ギンの形質)とそれに垂直に交わる黒い斑紋(クロスジの形質)が混在する点、脚の腿節が褐色を帯びる点(ギンの形質)、腹部に水玉模様を持つ点(クロスジの形質)など、観察すると2種の形質がモザイク状に発現していることがわかります。

雑種ゆえに、2種の形質の発現のしかたには個体差があるようで、上記の特徴は必ずしも全てのスジボソギンヤンマに当てはまるものではないようです。どちらの親の血が濃いか、比較するのもこうした雑種個体の楽しみ方の一つではないでしょうか。

このスジボソギンヤンマですが、雄は繁殖能力を持たない一方で雌にはそれがあるらしく、種概念に対する一つの反例と捉えることができそうです。

参考文献;尾園暁・川島逸郎・二橋亮(2012)『日本のトンボ』文一総合出版.

東京支社 太田祥作

初秋の賑わい

前回の記事からブログが更新されないまま1ヶ月以上が経ってしまいました。8月も今日で終わりですね。カブトムシやクワガタなどはそろそろ数が少なくなりますが、これからは水辺が楽しい季節です。晩春から夏にかけて幼虫時代を過ごしてきた水生昆虫が次々に羽化を始め、どんどん賑やかになってきます。

コガタノゲンゴロウ

写真は福岡県の某所でみられたコガタノゲンゴロウです。全国的に激減し、本州に現存する生息地は数えるほどしかありませんが、ここ数年のあいだ、なぜか四国や九州では大発生しています。先週、出張で訪れた現場からほど近い山あいの池にタモ網をいれたところ、10分程度でこのとおり。少し環境の良いところへ足をのばせば、おびただしい数のコガタノゲンゴロウを観察することができます。昔は関東でもこんな光景がみられたのでしょうか。コガタノゲンゴロウは、現在、環境省レッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類にランクされている貴重な水生昆虫です。是非とも大切にしたいものです。

コガタノゲンゴロウ頭部

東京支社・昆虫担当 菅谷

 

 

長年の酷使

ここ最近、なんだか器材の故障が立て続けに起きました。長年使っていた流速計が突如逆流した値を示したり、水質計がpH0.25ていうとろけそうな値を示したり。。。

先日は、ゴムボートの動力として活躍していた電動船外機が、突然、漏電・ショートして、煙を出して止まってしまいました。吹雪のダム湖や灼熱の印旛沼などなど、10年以上にもわたって常に全力疾走で酷使し続けてきたので、無理もないのかもしれません。

というわけで、現在、器材の修理や新規購入に追われるなど、忙しさに輪をかけております。まあでも、自分の身体に故障は無く、元気に調査に出られているのは、なによりです。(たまに、頭の回線が漏電・ショートすることはあります。)

下の写真は、先日、新たに買い替えてもらったデジカメで撮影してみたウグイです。まだ、あまり使い慣れておりませんが、これから、陸上や水中など、様々な環境で酷使していこうと思っております。

ウグイ

水生生物担当:川口

いつの間にやら

長年、水辺で調査をしていることもあり、これまで数々の“いつの間にやら”を見てきました。

マシジミだと思っていたら“いつの間にやら”タイワンシジミに代わっていたり、ナミウズムシだと思っていたら“いつの間にやら”アメリカツノウズムシに代わっていたり、トウヨシノボリ(当時の呼び方です)だと思っていたら“いつの間にやら”カワヨシノボリに代わっていたり、ヌカエビだと思っていたら“いつの間にやら”カワリヌマエビ属に代わっていたり。

これらはすべて、在来種だと思っていたら“いつの間にやら”よく似ている外来種に代わっていたというお話です。(当時、うっかりトウヨシノボリとして報告しようとした個体が、直前になって誤同定に気づき、カワヨシノボリに修正したような記憶が。。。「関東で突然カワヨシとか出るのホント辞めて欲しい!」って今でも根に持っています。)

先日は、利根川水系の某所で、スジエビに似た外来種(Palaemonetes sinensis ;下の写真)がたくさんいるのを見つけてしまいました。ここ最近、関東近辺での調査時にしばしば確認はしていたものの、まとまった数の個体を見たのは初めてかもしれません。(しかも抱卵しているし!)  これもやがては、上記と同様、在来スジエビだと思っていたら“いつの間にやら”外来スジエビに代わっていたり・・・、の1つの例になってしまうのではないかと危惧しております。

外来性スジエビ近似種Palaemonetes sinensis

外来性スジエビ近似種 Palaemonetes sinensis

今、巷で話題になっているアリゲーターガーなどと違って、一般には認識しづらいこうした「いつの間にやら系外来種」について、正確に存在を把握し伝えていくことも、われわれ調査屋の大事な仕事のひとつとなっております。

水辺担当:川口(いつの間にやら勤続17年)

ミミズのこと

ミミズは私達にとって身近な土壌動物のひとつです。我々が通常“ミミズ”と呼んでいる動物は、環形動物門Annelida貧毛綱(ミミズ綱)Oligochaetaナガミミズ目Haplotaxidaに属する大型陸生種(体長20mm以上)の総称のことを指しており、日本にはフトミミズ科Megascolecidaeなど6科が分布しています。

日本に分布するナガミミズ目の種数は500種以上に達するものと推定されています。このうち95%はフトミミズ科と考えられていますが、名前がついているものはその2割にも満たないと言われており、ミミズの同定は専門家でないと困難な状況です。

ミミズの表

ミミズの同定には、主に外部生殖器の位置・形態、内部生殖器の位置、環帯の位置・形態等が用いられますが、ミミズの体は柔らかいため、何もしない状態だと各部位の観察がしにくく、正確な同定ができません。そこで、採取してきたサンプルは以下のように固定処理を行って観察しやすくしてから、同定するようにします。

<ミミズの固定法>

  • ①生きている状態のミミズ。水で洗って泥などの汚れを落としてきれいにする。
  • ②水を入れた容器にミミズを入れ、50%程度の薄いエタノールを少量ずつ注ぎ、動かなくなるまで待つ。
  • ③動かなくなったミミズを、ガラス棒の間にまっすぐに並べ、ラップで隙間なく覆う。その後、10%ホルマリン液を注ぐ。
  • ④動かないように重しをして一晩静置する。
ミミズの固定方法
固定したミミズ

一晩置いたミミズのサンプル。まっすぐに固定され観察しやすい状態になりました。

ミミズの標本

固定後は10%ホルマリン液で保存します。

皆さんも、是非、お試しください!

つづく

引用文献

青木淳一, 2015. 日本産土壌動物 分類のための図解検索【第二版】, 1969 pp. 東海大学出版部.

石塚小太郎, 2014. ミミズ図鑑, 167 pp. 全国農村教育協会.

東京支社・昆虫担当 菅谷

安全教育講習会

先月末、仙台で行われたNPO法人野生生物調査協会主催の安全教育講習会に行ってきました。これは、毎年、本NPOの運営に関わっている生物調査会社数社の新入社員を対象に、野外調査時における安全対策等を学ぶために行われるもので、弊社からは今年度の新人1名が参加しました。(ちなみに私は講師役としてちょいと小話をしに行っただけです。)

クマやハチ、ダニ、毒ヘビなど、野外調査時にはさまざまな危険生物に遭遇する可能性がありますが、それらの危険生物について我々講師陣が体験談等も踏まえつつ身の守り方や対処法などの講習を行いました。また、6年前に東日本大震災という大きな災害に見舞われた東北での開催ということもあり、「調査時に災害に遭ったら」というテーマでの講習も今回新たに行いました。参加された方々は、皆、熱心に講習に耳を傾けていたのがとても印象的でした。今回の講習で学んだことを活かして、優秀な技術者になって欲しいと心から願っております。

仙台日帰りという強行スケジュールでしたが、懇親会(の2次会)で牛タン2切れを食べることもでき、忙しいながらも春の杜の都を堪能してきました。

東京支社:川口

安全教育講習会

春の野草摘み

この数日間、東京では春の嵐が吹き荒れています。桜の花もすっかり散ってしまい、ちょっと寂しい気持ちです。少し前の話になりますが、4月頭の日曜日に多摩川の河川敷へ行ってきました。

多摩川河川敷 河川敷の桜

ここ数年、桜見ついでに野草を摘んでかえるのが我が家の恒例です。

ツクシ ノビル

収穫物は、この日の晩の酒のお供に。苦味が程よいツクシ、甘くコリコリした食感のカンゾウ、香り豊かなノビル、歯応えが良いクコの新芽。素朴ながら、普段味わうことのない風味や食感に心躍ります。

野草料理

季節はいよいよ春本番。野草・山菜もまだまだ楽しむことができます。皆さんも週末の時間を使って、野山へお出かけになられてはいかがでしょうか。

東京支社・昆虫担当 菅谷

 

昆虫針のはなし

昆虫の研究に欠かせない標本を作成するうえで、最も重要なアイテムといえば、昆虫針(Insect pins)です。昆虫標本において、虫体と採集データあるいは同定ラベルなどの重要な情報を繫いでいるのが1本の昆虫針だと考えれば当然のことです。日本の虫屋にとって、お馴染みの昆虫針と言えば、有頭志賀昆虫針ですが、世界的にはヨーロッパの針が標準的に使用されています。志賀針との違いは、長さが2mmほど短く、頭(現在のものはナイロン製)が大きいことです。頭が大きいので扱いやすいのが長所です。さらに志賀針は長いのでヨーロッパ規格の箱では蓋に当たってしまい困るようです。ヨーロッパの針は、今はほぼすべてチェコで作られています。

チェコ製の昆虫針のパッケージ

上の写真はチェコ製の昆虫針のパッケージです。実は虫屋以外の人からこのパッケージに興味をもたれたので紹介します。色々なブランドが存在します。上段左から時計回りに、スフィンクス(ブラックエナメル)、アウステルリッツ(ブラックエナメル)、アウステルリッツ(ステンレス)、MONARCH(ステンレス)、KOSTAL(ブラックエナメル)となります。KOSTALの絵はアレクサノールアゲハ(ヨーロッパに生息)で、これやMONARCHのように蝶などの昆虫が描かれたもの、ヨーロッパの城のような風景のものもあれば、スフィンクスのようになぜこんなデザインにしたのか不明なユニークなものまで様々です。私はアレクサノールアゲハのものが気に入っていますが、皆様はどれがお好みでしょうか?

ブラックエナメルというのは黒針で、材質が鉄で防錆のエナメルでコーティングされた針です。ヨーロッパでは主に使用されていますが、日本では錆びやすいと言って嫌う人が多いと思いますが、私は台紙貼りの標本や、ハエの標本に使用しています。ハエはなるべく針刺しの標本にしたいのですが、小型のものでは細い針(0号以下)を使いますが、細いステンレス針は曲がりやすく、最近のものは、特に弱いです。そこで硬い黒針が向いています。さらに後に虫体がくるくる回ってしまうことも少ない点が評価できます。

現在、ヨーロッパ製の昆虫針はチェコで作られていますが、かつてはドイツやオーストリアで良いものが作られていました。カールスバード(西ドイツ製)やアンテコロー(オーストリア製, 象印)は秀逸な製品として有名でした。今でも、大切な標本にはこれらの針を使うという熱心な愛好家もいます。

昆虫同定担当:F

春のプチ生きもの散策

春分の日の東京は、ぽかぽか陽気でした。陽気に誘われて、お出かけされた方も多かったのではないでしょうか。私は遠出をせずに近所にある公園にプチ散策に行ってきました。23区内にある公園ですが、水辺や草木が豊富で身近に生きものを見ることが出来ます。

公園の様子(茶色い景色)

公園の様子(茶色い景色)

ほとんどの樹木が丸裸、草は枯草だらけ、といった具合で、まだまだ草木萌ゆるという感じにはほど遠い茶色の目立つ景色が広がっていました。そんな中にも、ヤナギの芽吹きやフキノトウなど、ちらほらとある明るい緑色があったり、モンシロチョウやキタテハが飛んでいたりました。決して珍しくない、ありふれた生きものたち。とはいえ、彼らの姿に春が感じられて気分がアゲてきます。

ふきのとう(すでに食べられないサイズに生長ずみ)

ふきのとう(すでに食べられないサイズに生長ずみ)

ですが、まだまだ冬の気配が色濃いのも事実。冬っぽい景色を見るたびに気分がサゲて、気分はアゲアゲとまではいかず、低空飛行な感じです。ふと樹木の幹をみると、またもや冬っぽい景色を見つけました。ハラビロカマキリの卵鞘(らんしょう)です。

木の幹の産み付けられたハラビロカマキリの卵鞘

木の幹の産み付けられたハラビロカマキリの卵鞘(らんしょう)

その幹には3個の卵鞘が産み付けられていました。1個はまだ孵化していない新しいものでしたが、2個は古いものでした。痛み具合がそれぞれ違うので、別々の年に産み付けられたようです。つまり、3世代3個の卵鞘。私には隣の木との違いはよく分かりませんが、ハラビロカマキリにとっては、世代を越えて選ばれるほど、この場所が魅力的な場所のようです。魅力的であれば同じ世代の卵鞘がいくつかあってもよさそうですが、1個ずつしかないのが不思議です。次の秋もここに産卵するでしょうか?そしてまた1個だけなのでしょうか?まだ先の話ですが、ちょっと楽しみです。

東京支社:N池