里山から世界に羽ばたく!?

 春になると本州から九州に飛来するサシバという猛禽類をご存知でしょうか?多くの地域では田んぼと雑木林が隣り合うような、いわゆる里山に飛来して子育てします。鳴き声がとても特徴的で「ピックイー」と響く声が分かるようになれば、姿が見えなくても声でその存在に気付くことができるでしょう。今回はそんな里山を象徴する鳥類のひとつ、サシバをご紹介します。

 サシバはバッタなどの昆虫類だけでなく、カエルやトカゲなどの小動物を食べます。田んぼや草地、林など様々な環境を行き来しながら、巡る季節に応じて変化していく獲物やそれを捕まえる場所を変えます。こうして里山の環境を最大限に活かし、多様な生きものに支えられながら生きるサシバは、まさに生態系の頂点に位置する里山のシンボルと言えます。

 子育てを終えた秋になると、冬越しのため南国に渡ります。遠くはフィリピンまで渡る個体も知られており、おおよその渡りのルートも解明されています。その壮大な渡りは国内各地で観察することができ、私も過去に、半日で四千羽ものサシバが他の猛禽類とともに次々に渡っていく光景を目の当たりにしたことがあり、その感激は今でも鮮烈に覚えています。

  渡りの季節には、緑の多い公園や稀に都市部の上空など身近な場所でサシバを観察することもあります。日に日に夏の暑さも和らぎ、外に出かける機会も多くなることかと思います。その際は、ほんの少し空を見上げてみてください。きっとみなさんの近くでも、秋空のもとで舞うサシバの姿に出会えるかもしれません。

里山の王者と言われるサシバ

(東京支社:町田)

※本稿は認定NPO法人棚田ネットワーク様の会報誌「棚田に吹く風」(https://tanada.or.jp/news/kaiho137/)に連載しているコラム「生きもの屋の里山考」に寄稿した内容です。(第137号、2025年秋号)


ブログ編集者追記:
上記、「棚田に吹く風」 には非掲載ですが、別バージョンの写真を本ブログのみの特別大サービスとして掲載します。 町田氏渾身の一枚とのことです。
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飛翔するサシバ