初夏のにおい

伊予ヶ岳から望む南房の山肌

5月初旬に、南房総へ行ってきました。初夏を思わせる陽気のなか、伊予ヶ岳から望む南房の山肌は、椎の花の鮮やかな緑でいっぱいでした。図鑑の情報では5月下旬~6月が花期とされている椎類は、早くも満開を迎えていたようでした。今年の春は例年よりも2週間以上早いようです。

椎の花をこのように遠くから眺めると、とても美しいですが、この椎の花が話題に上げられる時は、だいたいその強烈な匂いについてです。

気になって、ちょっとウェブで調べてみたところ、やはり好印象に書かれることは稀なようで、基本的に「くさい」と形容されるようです。極端な例だと、花の匂いに加え、落ち葉や枝張りなどが原因で、隣人問題に発展し、裁判沙汰になったケースもあるようです。また、ウェブ上で見つけた椎の花の臭いに対する表現のなかで、最もひどいものは、「重苦しい病み疲れたような匂い」と書かれていました。とにかく、嫌な匂いというのが世論のようです。

何を隠そう私も昔はこのにおいが苦手でした。しかし、今では「爽やかな初夏の香り」と感じるようになったのです。そう感じる背景には、恐らくこの香りの正体を知ったからだと思います。あの香りは虫を呼ぶための、つまり繁殖のための大切な香り。多くの生きものがこの香りに関わっているのでしょう。季節の移ろいを鼻で感じ、生きものの営みに思いを馳せると、「くさい」と思っていた匂いでも、爽やかに感じられたのかもしれません。または、単純に鼻の機能が加齢によって鈍化したのかもしれません。皆さんも嫌いなにおいの正体を探って、克服してみてはいかがでしょうか。

植物担当kk