田んぼにすむ“達人”~脱出のプロ、マメガムシ~

 厳しい寒さの冬が終わり、田んぼでは、これから本格的な田植えに向けて忙しくなる季節が訪れます。生きものたちも冬越しから目覚め、活動をはじめることでしょう。そんな時期だからこそ、これからの生きもの観察シーズンに向けて変わった能力をもつ生きものを紹介します。
 田んぼを主なすみかとする昆虫で「マメガムシ」という甲虫(カブトムシなどと同じ仲間)がいます。その名の通り、体長5 mmほどの「豆」サイズの小さな虫で、棚田のある水田地帯では、水中で植物などの上をゆっくり歩く様子がよく見られます。
 昆虫は田んぼにすむ様々な生きものの餌となりますが、これを利用する生きものの一つに皆さんもよくご存知の「カエル」がいます。このカエルたちは田んぼにすむ虫を好物の1つとしていて、マメガムシもよく狙われていることでしょう。
 しかし、このマメガムシはなんと、食べられても胃などの消化管を内側から刺激して通過することで、何事もなく生きたままお尻の穴から脱出できる驚きの特殊能力を持っているのです。
 たくさんの生きもののすみかである田んぼでは、私たちの見えないところで様々な攻防が起こっています。暖かいこれからの時期に田んぼでカエルを見かけたら、マメガムシのことを思いだしてじっと観察してみてはいかがでしょうか。

田んぼにすむマメガムシ

(東京支社:内田)

※本稿は認定NPO法人棚田ネットワーク様の会報誌「棚田に吹く風」(https://tanada.or.jp/news/kaiho135/)に連載しているコラム「生きもの屋の里山考」に寄稿した内容です。(第135号、2025年春号)