旅する生きもの屋

職業を選ぶ動機は人それぞれですが、私達生きもの屋のなかでは、日本中あちこち旅をして生きものを見に行きたい、というのが小さくない気がします。こんな狭い日本でも、生育・生息する生きものには地域性があるので、たくさんの生きものを見たいと思えば、自ずとこちらから出向く必要があります。事実、私達は日々、各地に出張に出て現地調査をしています。かくいう私も、若かりし日、この仕事を選んだのは日本各地で植物をみたいという思いが強くありました。

生きもの屋の経県値
以前、社員の「経県値(※1)」というのを調べたことがあります。これは、都道府県ごとにその経験を6段階(居住/宿泊/訪問/接地/通貨/未踏)で評価して合計値を出すもので、日本地図を塗り分けた「経県値マップ」も作成できます。これを、様々なキャリアの社員に出してもらいました。
経験値マップ上記は一例ですが、10年目くらいまではキャリアの長い技術者ほど「経県値」が高く、それ以降は日本地図がだいたい赤く塗られて横並び、という結果が得られました。10年もこの仕事をしていれば、ほとんど日本中を巡ることになるのが分かります。とはいえ、沖縄など、これまでほとんど当社の業務実績のない県も塗られていますので、仕事だけでなくプライベートでも皆、旅を楽しんでいるのでしょう。この業界以外の標準が分からないので、はっきりしたことは言えないのですが、概して生きもの屋は旅好きと思って間違いなさそうです。

自然との対話が生物技術者を育てる
最後に、社員が現場で撮ってきた絶景をご紹介します。自然がつくり出した、あるいは人と自然の関わりから生まれた景観に出会うなかで、私達は人と生きものとの在り方について考えを深めてきました。

御嶽

2014年に噴火した御嶽山の北側に位置する三ノ池。大自然の偉大さと人間の無力さを実感します。

棚田

長野県の棚田。ただただ「食べる」ために、重機もなしに人の手で築かれたことが感慨深いです。

暮れ

明け方や夕暮れ時の空、とくに春や秋のそれは刻々と姿を変え、それ自体が映像作品のようです。

焼石

紅葉の焼石岳。とてもアクセスのきつい焼石は山小屋も無人。撮影者は1人で泊まったそうです。

 

「北回帰線」で有名なアメリカの小説家ヘンリー・ミラーは旅について「目的地というのは決して場所ではなく、物事を新たな視点で見る方法である」という名言を残したそうです。たくさんの場所を訪れ、たくさんの自然や生きものを自分の目で見、自分の心で感じ、自分の頭で考えたことの集積、これこそが生物技術者としてのキャリアに厚みを持たせ、私達の最大の強みになっています。

(代表 高木圭子)

※1 経県値(都道府県市区町村/データと雑学で遊ぼう)
https://uub.jp/kkn/