盛夏と戦争と短歌

今年も暑い暑い夏がやってきました。ヒロシマ、ナガサキ、そして終戦。子供の頃から、8月は戦争のことを考える機会が多かったように思います。

【身近な戦争体験】
一昨年、103歳で亡くなった大叔父は、かの悪名高きインパール作戦の数少ない生還者でした。第二次世界大戦中、英国が掌握していたインド北東部の都市インパールを、隣国ビルマ(現在のミャンマー)から攻略しようとした作戦です(※1)。補給を度外視した精神論で強行された結果、誰一人インパールにたどり着かず、実に3万人の戦死者(多くは病死や餓死)を出したといわれます。大叔父は生前、多くを語りませんでしたが、体験記を遺しました。多くの短歌を交えたその内容は、穏やかな大叔父からは想像もつかない壮絶で悲惨なものでした。食料も医療物資も尽き、何日も続く大雨のなか、2000m級の峻厳な山々を徒歩で越え、幅600mの河を渡る撤退の道すがら、多くの仲間が飢えと病に力尽き、手榴弾で自決する爆音を聞くこともあったそうです。たくさんの死をどうすることもできずに見届けてきた大叔父は、その命の数だけの人生の重みを背負って生きていたのかもしれません。

短歌

遺された短歌と体験記

 

悲惨な戦争を身近な人の体験として知ると、二度とそんなことが起きてはならないという思いを新たにします。しかし、しがない生きもの屋集団である私たちに、できることはあるのでしょうか。

【生きもの屋が考える戦争と平和】
戦争の原因は、現代ではとても複雑ですが、生物多様性の劣化は間違いなく戦争リスクのひとつだと思います。私たちはみな、生物多様性の恩恵に生かされていますが、地球が有限である以上、その恩恵も有限です。全ての人々に行き渡らないことが、奪い合いとしての戦争のリスクになりますし、環境破壊により生物多様性の生産力が損なわれれば、リスクはいよいよ増大します。
すでに人類全体の現在の暮らしを支えるのには、地球が1.7個必要と言われています(※2)。毎年0.7個分前借りしている状態ですから、いつか破綻すると考えるのが合理的です。さらに、世界中の人が日本人と同じ生活水準を維持するためには地球が2.8個必要です。

【バイオキャパシティを高める】
このような資源の奪い合いに対しては、1.環境負荷を下げる、2.土地の生産性(バイオ・キャパシティ)を高める、3.これらを支え、つなぐことが必要だといわれます。もっとも大切なのは、限りある資源を全人類で分け合えるよう、今多くを消費している私たちひとりひとりが一地球人として、環境負荷を下げ、少ない資源とエネルギーで「地球1個分の暮らし」を実現することに違いありません。いっぽうで、私たちが生きもの屋として担うべき使命は、生物多様性を保全し、土地の生産性を高める技術的な方策を追及していくことだろうと思います。そして、生物多様性の大切さをいろいろな機会に伝えていく(支え、つなぐ)こともまた、大切だと思います。

(代表 高木圭子)

エコフット

※2より引用

 

※1 無謀と言われたインパール作戦 戦慄の記録(読むNスペ、NHK)
https://www.nhk.or.jp/special/plus/articles/20170922/index.html

※2 あなたの街の暮らしは地球何個分?(WWF)
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4033.html