終戦記念日に寄せて

8月15日、例年にない気象災害と異常な高温にあえぐ国土に、今年も終戦記念日がやってきました。皆さまは「戦争」について、何か思うことはありましたか。

そら

戦没者との対話

私は、金沢にある石川県護国神社を訪れたときのことを思い起こしました。御朱印を頂こうと足を踏み入れた社務所の壁に、先の大戦で亡くなった県内出身の兵隊さんたちの写真がずらりと並んでいたのです。その数は何十何百とかではなく、何千あるいは何万かという規模で、長い廊下が折れ曲がる先の先まで、壁一面を覆い尽くしていました。

ひとりひとりの写真の下に名前と亡くなった時の年齢が書かれていて、多くは10代後半から20代前半の年若い青年、人によってはあどけなさも残る少年でした。顔立ちには当然ながら皆個性があり、知り合いによく似た顔立ちの人もいます。祖父母の世代の人たちですが、この年頃といえば、まだまだ未熟でフォローの必要な年代だけれど、これから世の中を支えていく屋台骨になるはずの、「社会の宝」のような人たちです。それが、この人たちはみんな、国家の要請によって、戦火に散っていったのです。なんという、なんということでしょうか。

先の大戦でたくさんの人が命を落としたことを、知識として知らない人はいないでしょう。しかし、実際に亡くなった方々の顔を前に、無数の物言わぬ眼差しに曝される感覚は、「戦慄」と呼んでもいい衝撃でした。戦争を知らない私たちは、彼らの眼差しに、何を応えればよいでしょうか。

 

戦争は資源(生物多様性)の奪い合い

有史以前から人類は戦争を繰り返してきました。戦争の多くは、生きるための資源の奪い合いです。生きるために必要な資源が行き渡らない国や地域があることは、戦争に繋がりかねない大きなリスクです。そして、生きるために必要な資源の多くは健全で豊かな生物多様性の恵みなのです。にもかかわらず、その生物多様性の保全があまり重要視されないまま、日々、政治経済や貿易、外交が議論されていることに、生きもの屋として強い焦燥感を感じてきました。

 

資源の根源として世界が注目する生物多様性へ

とはいえ、変化もあります。2020年までの愛知目標の次の羅針盤として、2030年をターゲットにしたSDGs(持続可能な開発目標)が注目されています。愛知目標は、生物多様性条約というひとつの条約の締約国会議で採択された、世界の生物多様性を保全するための目標でした。それに対し、SDGsはニューヨークの国連本部、国連総会で採択された、世界が直面する喫緊の課題に取り組むための「持続可能な開発目標」です。掲げられた17の目標のなかには、貧困撲滅、飢餓対策、平和と公正などと並んで、気候変動対策、海域や陸域の生物多様性保全が掲げられています。いまや生物多様性は世界が持続するための喫緊の課題のひとつと認識されつつあるのです。

SDGs

生きものオタクが「この世界の片隅で」

平和と豊かな生物多様性は表裏一体、生物多様性なき平和も、平和なき生物多様性もありません。世界中の人々に生物多様性の恵みが行き渡るように、生きものオタク集団ができることはあるのか。あるとすればなんなのか。この世界の片隅で、微力ながら考えることを続けていきたいと、気持ちを新たにした今年の終戦記念日でした。

(企画担当 高木圭子)