カエルのほん

最近では、本屋さんで本を買うことも少なくなりましたが、大きな書店に行くと、必ず生物学や趣味・実用書のコーナーへ立ち寄ります。

理学書、図鑑、写真集、ハンドブック、エッセイ、飼育ガイドなど、生きものを扱った書籍は結構あります。

立ち読みをはじめると、ついつい時間を忘れてしまいますが、担当項目の新しい図鑑や文献などの資料収集は、我々の仕事のひとつでもあります。

つい最近、両生類・爬虫類の分野でも新しい図鑑が発売になりました。その名も「日本産カエル大鑑」(本体27,000円)。

少々、お高いのですがこの分野の専門家としてはもっていないと格好がつきませんので、即購入。

この図鑑は1999年に改訂版が出版された「日本カエル図鑑」の新版となります。

20年ほどの間に日本のカエル類は研究が進み、ひとつだった種が分かれたり、新たに種とされたりしました。

最新の分類に準拠した日本産カエル類48種を網羅しており、内容については、現行の図鑑類の中では最も詳細にまとまっています。

また、カエル好きな方は写真を眺めるだけでも、楽しめると思います。

日本カエル図鑑

ただ、弱点は野外に持って行くには大きすぎる点でしょうか。

ここまで高価な図鑑でなくでも、各出版社から1,000~3,000円程度のハンディなカエル類の図鑑も販売されています。

用途や好みに応じて探してみてください。

まだまだ身近に沢山いると思われているカエルたちですが、仕事としての現地調査を最前線で続けていると、日本各地で起こっている問題がみえてきます。「圃場整備や人工構造物による生息環境の破壊・改変」、「希少な種の乱獲・密漁・転売」、「外来生物・国内移入の問題」、「化学物質やウィルスによる汚染・疾病」、「気候変動や有害紫外線の増加」などです。

これらの問題が遠い世界の話しではなく、身近に感じられる例として、調査中に農作業されている方のお話しを伺うと、「最近はカエルの声がしなくなった。」とか、「毎年、田んぼに卵を産んでいたのに減った。」などそれらを裏付けように、生態系が崩れはじめたサインともいえる警鐘も聞こえてきます。

人が生活していくうえでの影響が、知らず知らずのうちに負の連鎖を生んでいることがあるのです。

カエルは環境の変化の影響を受けやすく、健全な水辺環境の指標となる生きものです。

今年の夏は、そんなカエルたちについてお勉強してみてはいかがでしょうか?

よく知っていると思っていても、何か再発見があるかもしれません。

両生類・爬虫類 担当 釣谷洋輔