「一陽来復」~二十四節気編vol.22~

今年の「冬至(とうじ)」は12月21日。2016年最後の節気に入りました。

「冬至」も有名な節気なので、みなさんご存じと思いますが、「一年で最も昼の時間が短い日」とされます。

その事実を別の角度からみると、「冬至」を過ぎれば昼の時間が長くなっていきます。

衰えていた太陽の力が再び勢いを増してくるということから、「冬至」のことを「一陽来復(いちようらいふく)」ともいい、悪いことが続いた後に幸運に向かうという意味も込められているのです。

同じ現象でも、とらえ方によって前向きに変わるものです。

更に「冬至」の次候、12月26日頃は「麋角解(きわしかのつのおつ)」とされます。

意味としては勇姿を誇る雄鹿の、枝ぶり豊かな大角が抜け落ち、生え替わりの時期を向かえる頃とされています。

大きくなり過ぎた力を削ぎ落とし、新たな気持ちを胸に一歩を踏み出す。

つまり、「初心に還る」という意味をもっています。

実際にニホンジカの角が抜け落ちるのは、もう少し先の早春です。

4月には再び角袋が生え始め、夏の間にみるみる伸びていき、繁殖期を迎える10月頃には立派な角が完成し、雄同士の角突きが行われます。

あの大きな角が毎年毎年生え替わるという事実が、「生きる」エネルギーを感じさせてくれます。

しかし、そんなニホンジカも別の角度から眺めてみるとここ数十年の間に人間や生態系に大きな影響を与えている側面があります。

野生動物の保護管理(ワイルドライフ・マネジメント)の最前線では、日本各地の山林や耕作地で、増えすぎたニホンジカの食害による深刻な森林被害や農業被害が報告され、実態の把握、防除技術の研究・開発、有害鳥獣駆除などが急がれています。

こういった問題は、動物愛護の観点と経済的な観点の対立や狩猟・害獣駆除人材(技術者)あるいは予算の不足により、一筋縄では解決に至らず、対策が難航しているのが現状です。

「生きものを守る」仕事に携わる者として、ひとつの物事を別の角度から見つめ直すことの重要さを調査中に拾いためた角や頭骨を眺めながら考える年末です。

シカコレクション

カメラ機種 : SONY ILCE-6000

レンズ:E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS

露出制御モード : プログラムAE

レンズの焦点距離 : 36.00(mm)

シャッター速度 : 1/20秒

レンズF値 : F5.6

露光補正量 : EV0.0

フラッシュ : 発光禁止

ISO感度 : 3200

トリミング:あり

両生類・爬虫類、哺乳類担当 釣谷洋輔