昆虫は自分では体温調節ができない変温動物だから、木々の葉が落ちて冬が到来すると、おおかたの種類は休眠に入り、野外から姿を消してしまいます。だいたい冬に活動する虫というのは、あまり聞いたことはないでしょう。
でも、そんな天の邪鬼が必ずいるもので、この冬の寒い季節にだけ好んで成虫が現れるものもいます。その理由は、天敵の少ない季節をあえて選んでいるとか、冷涼な気候の土地が起源であるとかいわれていますが、どうもまだ定説はないようです。
こうした冬に現れる昆虫の代表格は、蛾のキリガとフユシャクです。11月半ばから3月末までの冬枯れの雑木林に、季節を追って様々な種類が見られます。明治神宮でも、2013年春までの調査で、このキリガとフユシャクはそれぞれ14種と13種が記録されています。
この仲間はほかの蛾のようにあまり灯りには飛んできません。それではどうやって見つけるのか。陽の落ちた暗い林の中を飛び回る蛾を、ヘッドランプの灯りをたよりに捕虫網ですくいとるほか、キリガの仲間は、木の幹に糖蜜を塗っておくと、そこにたくさん集まってきます。
この糖蜜のブレンドには秘伝があるようですが、黒砂糖・酒・酢の3点は欠かせません。明治神宮の調査の際に、ただの思いつきから、配合する酢を中国産黒酢に代えたところ、非常に良い成績を挙げることができました。
キリガが糖蜜に飛来するのは日没直後からで、その後1時間ほどでピークを迎えます。私の経験では、気温が下がるせいなのか、日没後2時間を過ぎると急に飛来が少なくなります。その後も飛来すると思うのですが、早上がりの癖があるのでまだ確認していません。
画像は、昨年12月10日に実施しした、明治神宮の杜の蛾類調査風景です。この日はなぜか、蛾の飛来があまり多くありませんでした。
もう一つの画像は同じ明治神宮ですが、昨年の同時期のもの。中国産黒酢の糖蜜にたくさんのキリガが集まっています。
(新里達也)
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