「鎮座百年記念第二次明治神宮境内総合調査」は、2013年秋の報告書の出版と日本学術会議シンポジウムの開催でいったん終了しましたが、調査を担当した当事者たちの情熱はそう簡単に冷めるものではありません。私の専門性からいえば、昆虫類に調査不足の負い目があって、たびたび比較される皇居の水準に追いつきたい、できれば追い越したいという思いが強く残りました。
とくに蛾の仲間の確認種数が150種と少なく、この数字は皇居の記録630種の1/4にも及びません。皇居の調査は5年以上を要しているので、明治神宮の僅か1年の調査と比較すること自体に無理があるのですが、そうはいっても記録は記録。明治神宮の蛾は皇居の半分しか知られていないという事実に変わりはありません。
そこで特別に許可をもらい、この蛾の仲間について2014年秋から調査を再開しています。この調査には、日本蛾類学会会長の岸田泰則さん、それから日本有数のヤガ類の研究者である枝惠太郎さんが参加されています。言いだしっぺの責任として、私もほぼ毎月のように同行しています。
灯火採集は闇夜に近い暗い夜ほど成績が良いのですが、不夜城の都会の夜空は思いのほか明るく、灯火採集の白幕に飛来する蛾の数は多くありません。そうした苦戦を強いられながらも、調査回ごとに少しずつ記録が更新されていくのは、私たちの励みと楽しみでもあります。
(新里達也)
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